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富山地方裁判所 平成8年(ワ)301号 判決 1998年4月22日

ベルギー国二三四〇ビールセトウルンホウトセバーン三〇

原告

ジャンセン・ファーマシユーチカ・ナームローゼ・フェンノートシャップ

右代表者

ダーク コーリエ

右訴訟代理人弁護士

品川澄雄

右訴訟復代理人弁護士

滝井朋子

右訴訟代理人弁護士

吉利靖雄

富山市八日町三二六番地

被告

ダイト株式会社

右代表者代表取締役

笹山真治郎

富山市新庄町二三七番地

被告

株式会社陽進堂

右代表者代表取締役

下村健三

右両名訴訟代理人弁護士

田倉整

右同

内藤義三

右両名輔佐人弁理士

高田修治

主文

一  原告の請求をいずれも棄却する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

第一  請求

一  被告らは、別紙物件目録記載の物件を有効成分とする医薬品を製造・販売してはならない。

二  被告らは、被告らの所有する別紙物件目録記載の物件及びこれを有効成分とする医薬品を廃棄せよ。

三  被告らは、厚生大臣に対し、被告らの申請によってなされた薬事法に基づく別紙物件目録記載の物件を有効成分とする医薬品に対する製造承認について製造承認の整理届を提出せよ。

四  被告らは、厚生大臣に対し、前項の医薬品について健康保険法に基づく薬価基準収載の削除願を提出せよ。

五  被告らは、原告に対し、被告らが別紙物件目録記載の物件を有効成分とする医薬品について厚生大臣の製造承認を得るために別紙物件目録記載の物件を有効成分とする医薬品を用いて試験を行って得たデータ及びその他の資料を返還せよ。

第二  事案の概要

一  本件は、医薬品の有効成分等の特許権者であった原告が、被告らが右特許権の存続期間中に特許請求の範囲に属する物質を有効成分とする医薬品について薬事法に基づく製造承認を申請するために行った諸試験により、原告の特許権が侵害されたとして妨害排除請求権に基づき右特許権の存続期間の満了後に右医薬品の製造・販売の差止め等を求め、選択的に、原告の発明に対する独占的占有を侵奪して不当な利益を得たとして不当利得返還請求権に基づき右医薬品の製造・販売の差止め等を求めた事案である。

二  争いのない事実

1  原告は医薬品等の製造・販売を業とするベルギー国法人であり、被告らは医薬品等の製造・輸入・販売を業とする株式会社である。

2  原告は次のとおりの内容の特許権(以下「本件特許権」という。)を有していた。

(一) 特許番号 特許第一三六四八九五号

(二) 発明の名称 新規な1-(ベンゾアゾリルアルキル)ピペリジン誘導体

(三) 出願日 昭和五一年七月一九日

(四) 出願番号 特願昭五一-八五二一六号

(五) 優先権 一九七五年七月二一日及び一九七六年五月一七日の米国特許出願に基づく優先権

(六) 公告日 昭和六一年七月一七日

(七) 公告番号 特公昭六一-三一一〇九号

(八) 登録日 昭和六二年二月九日

(九) 特許請求の範囲 別紙特許請求の範囲記載のとおり

3  右特許請求の範囲第1項記載の一般式に関して別紙物件目録に式で示す化合物は、一般名を「ドンペリドン」といい、強い制吐活性を有し、商品名は「ナウゼリン」といい、慢性胃炎、胃下垂症及び胃切除後症候群等の疾患に対し細粒、錠、ドライシロップ及び座剤として用いられる。

4  原告は訴外協和発酵工業株式会社に右「ドンペリドン」の原末を輸出し、同社をしてこれを製剤せしめ、同社は右「ドンペリドン」の各種製剤を広く市販している。

5  被告らは、本件特許権の存続期間中に、別紙物件目録記載の物件を有効成分とする医薬品(以下「本件医薬品」という。)について薬事法に基づく製造承認を申請するために必要な諸試験を行って試験結果を得、これを用いて薬事法に基づく製造承認の申請をして製造承認を取得し、さらに、被告らの製造する「ドンペリドン」の製剤が健康保険に用いられる保険薬としての承認を得るため、健康保険法に基づく薬価基準収載の申請を行い、平成八年七月五日、薬価基準収載を受けた。

6  本件特許権の存続期間は、平成八年七月一九日、満了した。

7  被告らは、平成八年七月一九日以降、本件医薬品を製造・販売している。

三  争点

1  妨害排除請求権に基づく請求について

(一) 特許権者であった者は、特許権の存続期間の満了後に、特許権の存続期間中に行われた薬事法に基づく製造承認を申請するために行われた諸試験が特許権の侵害にあたるとして、妨害排除請求権に基づき妨害行為の差止めを請求することができるか。

(原告の主張)

(1) 本件特許権は医薬品の発明に関するものであるところ、医薬品の製造・販売には薬事法に基づく製造承認の取得と健康保険法に基づく薬価基準収載とを必要とする。

そして、薬事法に基づく製造承認を取得するためには、それが後発医薬品であっても、薬事法に定める諸試験を行い、医薬品としての適格性を確認した上、製造承認の申請に当たって医薬品としての適格性を示す資料を提出しなければならず、後発医薬品の場合、右諸試験の開始から薬価基準収載に至るまでの所要期間は現在二七か月を下らない。

ところで、右諸試験は特許法六九条一項に定める試験又は研究のためにする特許発明の実施にはあたらず、したがって、特許権の存続期間中に右諸試験を行うことは特許権に対する侵害行為であり、右諸試験の結果を資料として製造承認を申請することも特許権に対する侵害行為であり、さらに、健康保険法に基づく薬価基準収載を申請することも右違法行為を基礎としてなされるものであるからそれ自体違法である。

したがって、後発医薬品会社が特許権の存在する先発医薬品についてその医薬品の製造・販売を適法に開始しようとするならば、当該特許権の存続期間の満了を待って薬事法に定める諸試験を開始することが必要となり、その後薬価基準収載に至るまでには二七か月を要するのであって、後発医薬品会社は当該特許権の存続期間の満了後直ちに当該後発医薬品の製造・販売を開始することはできない。

(2) そして、特許権に対する妨害状態が特許権の存続期間の満了後も存続するような場合には、特許権の存続期間の満了後も特許権に対する妨害状態の継続する限り妨害排除請求権は存続する。

本件においても、被告らが本件特許発明の実施品である本件医薬品を本件特許権の存続期間の満了日直後から販売し始めていることからすると、被告らは少なくともその約二七か月前である本件特許権の存続期間中に本件医薬品について製造承認を取得するための諸試験を開始したはずであり、右諸試験は本件特許権に対する侵害行為であり、右諸試験の結果を被告らの本件医薬品の製造承認を申請するために用いたこと、これに基づいて製造承認を取得し、更に本件医薬品の製造・販売を開始したことは本件特許権に対する妨害行為であり、被告らによる本件特許権に対する妨害行為は本件特許権の存続期間の満了後も少なくとも二七か月にわたって継続している。

したがって、被告らの妨害行為に対する原告の妨害排除請求権も本件特許権の存続期間の満了後も少なくとも二七か月間は存続する。

(3) また、(1)からすると、医薬品の発明に関する特許権の場合、特許権者は、特許権の存続期間中、特許権本来の排他的全権能を享有し得るだけでなく、現行法体系全体の中から生じてくる法的利益として、その特許権の存続期間の満了後も更に二七か月の間はその特許発明の実施品である医薬品を独占的に製造・販売することのできる権能を法律上有しているということができる。したがって、特許権者は、特許権の存続期間中その妨害排除請求権をもって特許権に対する妨害行為の差止めを求めることができるだけでなく、右法的利益を有している期間中は特許権に対する妨害行為が存続している限り、その妨害排除請求権に基づいて特許権に対する妨害行為の排除を求めることができる。

本件においても、右(2)のとおり、被告らによる本件特許権に対する妨害行為は本件特許権の存続期間の満了後も少なくとも二七か月にわたって継続している。

したがって、被告らの妨害行為により原告は本件特許権の存続期間の満了後も少なくとも二七か月間はその享有し得た特許発明の実施品を独占的に製造・販売しうる法的地位を害されることになり、その妨害排除請求権に基づいて特許権に対する妨害行為の排除を求めることができる。(被告らの主張)

(1) 特許法一〇〇条一項及び二項に基づく差止請求においては、請求の根拠となる特許権が口頭弁論終結時において存在することが訴訟要件である訴えの利益を基礎づけるものである。

そして、本件特許権は平成八年七月一九日に存続期間の満了により消滅し、原告の主張する差止請求権も消滅したのであるから、原告の各請求の基礎をなす権利は消滅しており、原告の各請求は実体審理をするまでもなく却下されるべきである。

(2) 特許権は、排他的独占支配権であって物権的請求権など物権に準じた法的効力を有するものであり、物件法定主義の類推による権利内容公示の要請並びに発明者及び公衆の利益を考慮して産業政策上至当であると決定された存続期間の趣旨等に照らし、その効力については特許法の明文の規定に忠実に従って解釈すべきである。

したがって、法律の明文の規定もなしに原告が主張するような現行法体系全体の中から生じるものとして差止請求権が存続期間の満了後も存続するような解釈をとることはできない。

(二) 医薬品に関する特許権の存続期間中に薬事法に基づく製造承認を取得するために特許請求の範囲に含まれる物質を使用することは、業として特許発明を実施する行為にあたるか。

(原告の主張)

医薬品の製造・販売を業とする企業が行政的許可等の処分を取得するために行う行為は、その医薬品の製造・販売のみを目的とするものであり、それ自体も業としての行為である。

さらに、医薬品が特許請求の範囲に含まれる物質である場合には、これを製造又は輸入し、使用することはその特許発明の実施である。

したがって、被告らが本件特許権の存続期間中に本件医薬品について製造承認の取得、薬価基準収載のためになした行為は本件特許権の業としての実施にあたる。

(被告らの主張)

特許法は業として特許発明を実施することを侵害行為と規定するが、これは実質的には特許権者に排他的独占権を認めることによってその経済的利益を保障しようとするものであるから、特許権者の排他的独占権に侵害を与えないような行為は特許権の侵害行為ではない。

そして、被告らの行為は、本件特許権の存続期間が満了した後に医薬品として製造・販売するための準備行為として、その許認可を得るために医薬品の製造・販売の承認基準に従って行った試験又は研究であり、被告らは本件特許権の存続期間が満了するまでは、医薬品として製造・販売することはできないし、その意思もない。

したがって、被告らの行為自体は原告に損害を与えるものではないから、業として特許発明を実施したものではなく、本件特許権の侵害行為ではない。

(三) 右(二)の行為は試験又は研究のためにする特許発明の実施にあたるか。

(原告の主張)

特許権の効力の及ばない試験又は研究のためにする特許発明の実施とはその特許発明の技術を更に進歩せしめるものでなければならず、その行為が特許発明の技術を更に進歩させる目的を有することが必要である。

しかしながら、被告らの行為は、特許発明の医薬品と同効のものとして販売するための行政上の許可を得るために、これと同一の薬効を有する医薬品であること及びそれが必要最低期間は同一の薬効を保持して変質しないことを証明する資料を得ることのみを目的としたものであって、その特許発明の技術を更に進歩せしめる目的を有するものではない。

したがって、被告らの行為は試験又は研究のためにする特許発明の実施にはあたらない。

(被告らの主張)

試験又は研究のためにする特許発明の実施が特許権の侵害行為の除外事由とされたのは、科学技術の進歩に寄与するものであることが大きな理由であるが、具体的に科学技術の進歩に寄与したという結果までは必要でなく、科学技術の進歩に寄与する蓋然性があれば足り、主観面においても科学技術の進歩に対する寄与が直接の目的である必要はない。

そして、被告らの行為は、それによって新規な発明が生まれ、また、人体に対する作用を確認する臨床試験も行われたが、その中で医薬品としての副作用が発見されれば厚生省に報告するものであったから、医学上の意義のあるものであった。

したがって、被告らの行為は試験又は研究のためにする特許発明の実施にあたる。

2  不当利得返還請求について

被告らの行為は原告の本件特許発明に対する独占的占有を侵奪する不当利得にあたるか。

(原告の主張)

原告は本件特許発明についてその完成と同時にこれを独占的に管理し、さらに、本件特許権の存続期間中は法律上独占的な占有権限に基づいてこれを独占的に占有し続けてきた。

被告らは、遅くとも本件特許権の存続期間の満了時の二七か月前から、何らの法律上の原因なくして、右の事情を十分に知悉しながら、本件特許発明を実施して他人の財産である原告の本件特許発明に対する独占的な占有を侵奪し、これを喪失せしめるという損失を原告に生ぜしめ、これによって製造承認、薬価基準収載の取得及びこれに基づく本件医薬品を製造・販売しうる地位という利益を受けた。

したがって、被告らは、その受けた利益、すなわち、製造承認、薬価基準収載の取得及びこれに基づく本件医薬品を製造・販売しうる地位を右占有侵奪期間である二七か月間にわたり、不当利得として原告に返還すべきである。(被告らの主張)

争う。

第三  争点に対する判断

一  争点1(一)(妨害排除請求権)について

1  まず、原告は、特許権に対する妨害状態が特許権の存続期間の満了後も存続するような場合には、特許権の存続期間の満了後も特許権に対する妨害状態の継続する限り妨害排除請求権は存続すると主張する。

ところで、特許法によると、特許権者は、業として特許発明の実施をする権利を専有し(同法六八条本文)、自己の特許権を侵害する者又は侵害するおそれのある者に対しその侵害の停止又は予防を請求することができるが(同法一〇〇条一項、二項)、その一方で、特許権の存続期間は原則として特許出願の日がら二〇年をもって終了することとされ(同法六七条一項)、かつ、例外として特許権の存続期間が延長される場合が規定されている(同条二項)。これは、特許法が、発明の保護及び利用を図ることにより、発明を奨励し、もって産業の発達に寄与する(同法一条)という目的を達成するために、一定期間は特許権者に発明の実施の独占を認め、その一方で、右一定期間経過後は何人にも発明の自由な実施を認める趣旨であると解される。

そして、特許権に基づく差止請求権は特許権に付与された主要な効力の一つであるところ、特許権の存続期間の満了後も特許権に基づく差止請求権を行使することができるとすると、特許権の存続期間を越えて特許権の効力の存続を認めることになり、このような結果は右のとおり特許権の存続期間が法定され、これを延長しうる場合が限定されている趣旨に反するものである。

したがって、特許権の存続期間の満了後は、特許権に基づく妨害排除請求権を行使することはできないものと解するべきである。

2  さらに、原告は、現行法体系全体の中から生じてくる法的利益として、特許権の存続期間の満了後も更に二七か月の間はその特許発明の実施品である医薬品を独占的に製造・販売することのできる権能を法律上有していると主張する。

しかしながら、原告の主張するように、後発医薬品製造会社が薬事法に定める諸試験の開始から薬事法に基づく製造承認の取得、更に健康保険法に基づく薬価基準収載に至るまでに二七か月を要し、その間先発医薬品製造会社が独占的に特許発明の実施品を製造・販売することができる利益を有しているとしても、それは、薬事法が医薬品等の品質、有効性及び安全性の確保のために必要な規制を行うことによって生じたものであって、特許権者の利益を保護しようとしたものではない。

したがって、右利益は、事実上の利益であって、現行法体系全体の中から生じてくる法的利益であるということはできない。

3  以上からすると、特許権に対する妨害状態が特許権の存続期間の満了後も存続するような場合には特許権の存続期間の満了後も特許権に対する妨害状態の継続する限り妨害排除請求権は存続するとの原告の主張、現行法体系全体の中から生じてくる法的利益として特許権の存続期間の満了後も更に二七か月の間はその特許発明の実施品である医薬品を独占的に製造・販売することのできる権能を法律上有しているとの原告の主張は、いずれも採用することができない。

二  争点2(不当利得返還請求権)について

原告は、被告らが法律上の原因なくして自ら製造承認、薬価基準収載及びこれに基づく本件医薬品を製造・販売し得る地位という利益を受けたのであるから、その不当に受けた利益を原告に返還すべきであり、具体的には本件医薬品の製造・販売の差止め、本件医薬品等の廃棄、厚生大臣に対する製造承認の整理届の提出、厚生大臣に対する薬価基準収載の削除願の提出並びに本件医薬品を用いて試験を行って得たデータ及びその他の資料の返還を主張する。

ところで、不当利得返還義務の客体については、民法上明示されていないが、できる限り利得した原物をもって返還すべきであり、利得の性質上それが不可能な場合又は利得したものを利得者が費消し若しくは処分したなどの理由で原物をもっての返還が不可能になった場合にだけ、その価格をもって返還すべきものと解されている。

これを本件についてみると、原告の主張する被告らが受けた利益自体は無形のものであってその性質上原物をもっての返還が不可能な場合であるから、その価格をもっての返還を求めるのであればともかく、原告の主張するような本件医薬品の製造・販売の差止め等を求めることはできないといわなければならない。

したがって、被告らは法律上の原因なくして自ら製造承認、薬価基準収載及びこれに基づく本件医薬品を製造・販売し得る地位という利益を受けたのであるから、その不当に受けた利益を原告に返還すべきであり、具体的には本件医薬品の製造・販売の差止め等を求めることができるという原告の主張を採用することはできない。

三  以上からすると、その余の点について判断するまでもなく、原告の本訴請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとする。

(平成九年一二月一日 口頭弁論終結)

(裁判官 村上泰彦 裁判長裁判官大濵恵弘、裁判官堀内満は転補のため署名押印することができない。 裁判官 村上泰彦)

別紙

物件目録

左式で示す5-クロロ-1-〔1-〔3-(2-オキソ-1-ベンゾイミダゾリニル)プロピル〕-4-ピペリジル〕-2-ベンゾイミダゾリノン、(一般名:ドンペリドン)

<省略>

別紙

特許請求の範囲

「1、式

(1)

<省略>

〔式中、

R1及びR2は水素、ハロ、低級アルキル及びトリフルオロメチルから成る群からそれぞれ独立的に選ばれ、

Bは二価の基<省略>

<省略>

<省略>、<省略>、-N=N-及び-N=CH-、から成る群から選ばれた一員であり、ここでLは水素、低級アルキル、低級アルキルカルボニル及び低級アルケニルから成る群から選ばれた一員でありそして該二価の基はそれらのヘテロ原子によりベンゼン核に結合しており、

R3は水素及びメチルからなる群から選ばれた一員であり、

m及びnはそれぞれ1乃至2の整数でありそして

<省略>は、

<省略>

(式中、R7及びR8は水素、ハロ、低級アルキル及びトリフルオロメチルから成る群よりそれぞれ独立的に選ばれ、YはO及びSから成る群より選ばれた一員であり、Mは水素、低級アルキル及び低級アルキルカルボニルから成る群よる選ばれた一員であり、そして破線はピペリジン核の3及び4位置の炭素原子間結合が適宜二重結合であってもよいことを示し、ただしYがSである場合にはピペリジン核の3及び4炭素原子間は単結合でありそしてMは水素であるものとする)

を有する基である〕

で示される1-(ベンゾアゾリルアルキル)ピペリジン誘導体及びその医薬的に許容し得る酸付加塩から成る群より選ばれた化合物。

2、5-クロロ-1-{1-〔3-(1・3-ジヒドロ-2-オキソ-2H-ベンゾイミダゾール-1-イル)-プロピル〕-4-ピペリジニル}-1・3-ジヒドロ-2H-ベンゾイミダゾール-2-オン及びその医薬的に許容し得る酸付加塩から成る群より選ばれた特許請求の範囲第1項記載の化合物。

3、活性成分として式

(1)

<省略>

〔式中、R1及びR2は水素、ハロ、低級アルキル及びトリフルオロメチルから成る群からそれぞれ独立的に選ばれ、

Bは二価の基<省略>

<省略>

<省略><省略>、-N=N-及び-N=CH-、から成る群から選ばれた一員であり、ここでLは水素、低級アルキル、低級アルキルカルボニル及び低級アルケニルから成る群から選ばれた一員でありそして該二価の基はそれらのヘテロ原子によりベンゼン核に結合しており、

R3は水素及びメチルから成る群から選ばれた一員であり、

m及びnはそれぞれ1乃至2の整数でありそして

<省略>は、

一式から成る群から選ばれた一員であり、ここで、

<省略>

(式中、R7びR8は水素、ハロ、低級アルキル及びトリフルオロメチルから成る群よりそれぞれ独立的に選ばれ、YはO及びSから成る群より選ばれた一員であり、Mは水素、低級アルキル及び低級アルキルカルボニルから成る群より選ばれた一員であり、そして破線はピペリジン核の3及び4位置の炭素原子間結合が適宜二重結合であってもよいことを示し、ただしYがSである場合にはピペリジン核の3及び4炭素原子間は単結合でありそしてMは水素であるものとする)

を有する基である〕

で示される化合物又はその医薬的に許容し得る酸付加塩を含有することを特徴とする制吐剤。

4、該式(Ⅰ)化合物又はその医薬的に許容し得る酸付加塩の制吐的有効量と不活性担体物質とを含有して成る特許請求の範囲第3項記載の剤。

5、投与単位当り制吐的有効量の式(Ⅰ)化合物又はその医薬的に許容し得る酸付加塩を、医薬的担体との混合物として含有して成る投与単位形態の特許請求の範囲第3項記載の剤。

6、医薬的担体が固体の摂取可能な担体である特許請求の範囲第5項記載の剤。

7、医薬的担体が液体の摂取可能な担体である特許請求の範囲第5項記載の医薬的組成物。

8、医薬的担体が非経口的使用に適した無菌の液体である特許請求の範囲第5項記載の医薬的組成物。

9、投与単位当り制吐的有効量の5-クロロ-1-{1-〔3-(1・3-ジヒドロ-2-オキソ-2H-ベンゾイミダゾール-1-イル)-プロピル〕-4-ピペリジニル}-1・3-ジヒドロ-2H-ベンゾイミダゾール-2-オン及びその医薬的に許容し得る酸付加塩を、医薬的担体との混合物として含有してなる投与単位形態の特許請求の範囲第5項記載の剤。」

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